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岡山地方裁判所 平成4年(わ)379号 判決 1992年12月16日

本店所在地

岡山県備前市穂浪四〇五八番地の一

備前海産有限会社

(右代表者代表取締役 石野喜美治)

本籍

岡山県備前市穂浪三一二〇番地

住居

岡山県備前市穂浪三〇八一番地

職業

会社役員 石野喜美治

昭和一二年五月一日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官今井秀智出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人備前海産有限会社を罰金一〇〇〇万円に、被告人石野喜美治を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人石野喜美治に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人備前海産有限会社(被告人会社)は、肩書地に本店を置き、このわたの加工販売を目的とする資本金一二〇〇万円の有限会社であり、被告人石野喜美治(被告人)は、同社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人石野喜美治は、同社の業務に関し法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六三年一〇月三一日から平成元年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が二八五九万二八七六円で、これに対する法人税額が一一三六万七〇〇〇円であったにもかかわらず、平成元年七月三一日、岡山県赤磐郡瀬戸町瀬戸七〇番地所在の所轄瀬戸税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が一八四万七四五〇円で、これに対する法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一一三六万七〇〇〇円を免れ、

第二  平成元年六月一日から平成二年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が三二九五万四二二八円で、これに対する法人税額が一二二九万六七〇〇円であったにもかかわらず、平成二年七月三一日、前記瀬戸税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が八一万一九一〇円で、これに対する法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一二二九万六七〇〇円を免れ、

第三  平成二年六月一日から平成三年五月三一日までの事業年度における実際の所得金額が四六三四万一八八一円で、これに対する法人税額が一六六〇万三四〇〇円であったにもかかわらず、平成三年七月三一日、前記瀬戸税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が四三万八八五七円で、これに対する法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一六六〇万三四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一  被告人石野喜美治の当公判廷における供述

一  被告人石野喜美治の検察官に対する供述調書三通(検三三ないし三五号)

一  那須あゆみ(検九号)、石野和榮(検一〇号)、石野和(検一一号)、石野和美(検一二号)、石野祐治(検一三号)及び竹本信孝(検一四号)の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の領置てん末書(検七号)

一  大蔵事務官作成の売上高調査書(検一五号)、材料仕入高調査書(検一六号)、賃金調査書(検一七号)、厚生費調査書(検一八号)、租税公課調査書(検一九号)、消耗品費調査書(検二〇号)、雑費調査書(検二一号)、荷造運賃調査書(検二二号)、販売手数料・送金料調査書(検二三号)、保険料調査書(検二四号)、受取利息調査書(検二五号)、損金額算入県民税利子割調査書(検二六号)、事業税認定損調査書(検二七号)、申告欠損金額調査書(検二八号)及び調査事績報告書(検二九号)

一  登記簿謄本(検三八号)

一  押収してある備前海産有限会社法人税決議書一綴(平成四年押第七四号の一)

判示第一の事実について

一  被告人石野喜美治作成の修正確定申告書の謄本(検三〇号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検二号)

判示第二の事実について

一  被告人石野喜美治作成の修正確定申告書の謄本(検三一号)

一  検察官作成の捜査報告書(検五号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検三号)

判示第三の事実について

一  被告人石野喜美治作成の修正確定申告書の謄本(検三二号)

一  検察官作成の捜査報告書(検五号)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(検四号)

(法令の適用)

被告人らの判示第一ないし第三の各所為は、いずれも法人税法一五九条一項(被告人備前海産有限会社については、更に同法一六四条一項)に該当するところ、被告人石野喜美治については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人備前海産有限会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金一〇〇〇万円に、被告人石野喜美治については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一年にそれぞれ処し、被告人石野喜美治に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

(量刑の理由)

本件は、このわたの加工販売を目的とする被告人会社の代表者である被告人が、同社の法人税確定申告をなすについて、不正の行為により虚偽の申告をし、三事業年度にわたり、合計四〇二六万七一〇〇円の法人税を免れたという事案であるところ、<1>ほ脱の方法としては、特定の取引先に対する売上を公表する帳簿に記載せず、その帳票類は当初から公表分とは別管理にし、その取引先からの入金は簿外の預金口座に振り込ませ、かかる裏金口座はシーズンの初めに開設し、シーズン終了時に解約するなどの操作をして、売上の一部を秘匿していたものであり、関与税理士に対してはこれらをまったく秘匿したまま虚偽の決算書及び申告書を作成させていたものであって、その態様は、関与税理士さえ気づかないほどの計画的かつ悪質なものであること、<2>このようにして秘匿した売上は、従兄弟で実質的な共同経営者である石野和と折半し、自己が取得した分はこれを家族名義で定期預金にし、自家用車や土地を購入する資金にあてているが、かかるほ脱の背景には、このわたの加工販売のシーズンが限られており、シーズン以外には収入が途絶え、また売掛金の回収に期間を要するなどの多少の不安はあったとはいえ、その主たる動機は、昭和六三年一〇月に設立した被告人会社の経営が順調で思いのほか高収益を上げられることが判明したため、平成元年二月ころから、もっぱら蓄財を企図して売上の一部除外を行うようになったものであって酌量すべき事情は格別認められないこと、<3>ほ脱税額は、三事業年度で合計四〇二六万七一〇〇円の多額に上っており、ほ脱率は実に一〇〇パーセントであること、<4>税務調査によって売上の一部除外が発覚した後においても、取引相手の一人に依頼して虚偽の領収証を作成させて提出するなどしていることなどからすれば、被告人らの本件各犯行の犯情は悪質であり、その刑責は重大というべきである。

しかしながら、被告人は、現在では、本件各犯行を深く反省し、二度と再犯は繰り返さない旨誓約をしており、被告人会社に参画し、本件各犯行に加担していた妻や従兄弟などにおいても同様の誓約をし、今後は適正な納税をなすよう互いに注意していくと述べていること、被告人会社においては、修正申告をなし、ほ脱にかかる法人税を本税のほか、付帯税を含め、すべて完納していること、被告人には、過去に会社を経営したことはなく、ほ脱については本件起訴分がすべてであることなど、被告人らのために酌むべき事情も認められる。

以上諸般の事情を総合考慮すれば、被告人らに対しては、主文の各刑を科するとともに、被告人石野喜美治に対しては、今回に限り、その刑の執行を猶予するのを相当と認める。(求刑、被告人備前海産有限会社に対し罰金一五〇〇万円、被告人石野喜美治に対し懲役一年)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 田近年則)

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